「香山リカの生きる力をつける処方箋(香山リカ)」の読書記録。2024年3月に読了。最近、泣いてばかりで、頑張ろうと空回るばかりで、しんどかったので、手に取った。
概要
精神科医である著者が、現代人に向けて、6つの心の処方箋を処方する。
ありのままの自分
ありのままの自分について、著者は下記のように述べる。
『こころの処方箋5:言葉にできる”本当の自分”なんて、ウソと思った方がいい』
日常生活の中でも、私たちは『本当の自分』に出会っているのです。でも、それははっきり口で説明したりその姿をとらえたりできるようなものではない。ただ、「ああ、これがそうなのかな」としみじみ感じるような、そんな性質のものではないのでしょうか。
その体験の後に心がなんとなく温かくなったり、なんともいえない満足感が押し寄せたり。もし、家族と話していたり、仕事がうまくいったりしているときなどにそういう瞬間が訪れたら、「ああ、私は今、『本当の自分』に出会ったんだな」と思ってくださいね。
「香山リカの生きる力をつける処方箋」より抜粋
わたし自身が、『本当の自分』に出会っているのはいつだろうか。
やっぱり、自分がなにかに満足しているとき。ゲームを楽しいと思えたり、植物のことが愛おしいと思えたり、わんこや猫を飼いたいなあって夢想しているとき、音楽を聴いてワクワクしているとき、他人のことを考えて仕事ができたとき、やりたいことに向けて頑張っているとき。子供の時感じたキラキラした魔法を、まだ追いかけていたいと思っているとき。コーヒーを飲みながら、静かにジャズを聴いているとき。図書館で、静かに本を読んでいるとき。
そんな時、わたしは本当の自分に出会ったと感じる。
どうしてそんなに全速力で走り続けるの?
もっと綺麗になったら幸せになれる。熱中できる自分に合った仕事を見つけることができたら幸せになれる。良いパートナーを見つけたら幸せになれる。きっとどれも正しいけれど、そのための努力は、正直苦しい。
90年代初頭から、男女雇用機会均等法などにより、「ブランドやレストランにも詳しく、メイクや着こなしで自分をより美しく見せるすべも身に着け、英語も話せて日経新聞も読みこなすスーパーウーマン」が誕生した。どうしてそんなに全速力で走り続けるのか、その答えは下記にたどり着くのではないか、と筆者は考察する。
「…努力し続ければ私、幸せになれると思うから。人間として、もちろん女性として」
「香山リカの生きる力をつける処方箋」より抜粋
努力しなければ、幸せを感じることは出来ないのかな。私の場合は、半分Yesだ。自分が好きでないから、もっともっと努力して、理想の自分になって、理想の人生を過ごしたいと思っている。だから、努力を辞めることができない。辞めたとたん、要らないと言われると思っているから、怖くて辞められない。
一方で、いまある幸せを感じ、その瞬間そのものに満足するときもある。朝、コーヒーの香りを楽しんでいるとき。抹茶ラテを淹れて、味わっているとき。植物たちの成長を見守っているとき。ダメになった自分でも、気にかけてくれる人がいるとわかったとき。ねこ飼いたいなあと妄想しているとき。
海の向こうのダイアナ妃
海の向こうにも似たような女性がいたと、筆者は言う。イギリスの皇太妃になった、ダイアナ妃だ。素朴な女学生から、貴婦人へと変身を遂げた。二人の王子を育て、チャリティーにも打ち込む。ジムで体型を保つ努力も怠らず、ロックを愛する、大の人気者。
そんな「走り続けるおとぎ話のシンデレラ」は、陰では悩み、傷つき、病んでいた。夫チャールズは、カミラ夫人と不倫を繰り返していた。ダイアナ自身も不倫をしていたし、過食症に陥ったり、自傷行為を繰り返したりしていた。
わたしはこのダイアナ妃の話を、この本で初めて知ったが、著者が「似ている」といった理由が、感覚で分かる気がした。どうして私はこんなにも、もっと美しく健康的に痩せて、綺麗になりたいと思っているのか。明るく社交的な性格のフリを辞めることができないのか(最近はそのフリすら出来ていないが)。私もダイアナ妃と同じように、ジムに行って体型を保とうとするし、チャリティーでの慈善活動に”依存”してしまうかもしれない。それはなぜなのか。
著者は「結婚ってなに?私は結婚できるの?」という声が、その答えだと言う。
20代後半の独身女性には何ともキツイ一撃だが、感覚的にはその通りと思う。うまく言葉にはできないけれど、わたしたちは、ずっと「内なる結婚」にとらわれている。
所感
「こころの処方箋5」の、「本当の自分とは」という内容が、一番しっくりきて、良い考え方だなあと思った。自分の幸せを構成する要素はなんだろう、と考え直すきっかけになった。コーヒー、友達、植物、ねこ、わんこ、ご飯を一緒に食べてくれる人、音楽、本、図書館、アニメ、漫画、抹茶ラテ。そんな感じ。
「内なる結婚」の話はグサッときたけれど、ああ、仲間がいたんだとも思えた。誰もがうらやむ美しく、賢いプリンセスが、自分と同じ種類の息苦しさを抱えていたと知って、わたしは勝手に、少し救われた気持ちになってしまっていた。
心が苦しいからこの本を手に取ったけれど、いまある息苦しさを選択しているのは、結局巡り巡って、世の中じゃなく、自分自身なんだと思った。
幸せって、実は結婚だって、全然特別なことなんかじゃない。それは、朝のコーヒーだったり、音楽だったり、動物や植物を愛することだったり、静かに本を読んだり、友達と一緒に過ごしたり、働いたりすることだったりする。
自分のこころが丸くなるような、暖かいものですこしずつ心の隙間が埋まっていくような、その感覚を、忘れずにいたいと思う。
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