【大人になるということ】One last Kiss(宇多田ヒカル)

One last kissで一番好きなMAD。

 このMADは、レイが青空の下、田植えをするシーンから始まって、棚田が風になびくシーンで終わる。そこが一番のお気に入り。

 大人になるって、どういうことだろうか。エヴァンゲリオンの主人公たちは、みんな大人になった。

 私が今持っている、『大人になるとは』の答えは、こういうことなんじゃないかと思う。

 生きるために、働くこと。特別な人間としてではなく、ありふれた村人として、日々働き、ご飯を食べ、同僚と協力し、友達と語り合い、恋人と寄り添い、家族と生きること。これまで積み上げてきた人生に縛られながら、それに毎日、そっとひとつ新しいレンガを積んでいくこと。退屈で古臭い日々の営みが、どんなに尊いことかに気づくこと。

 ずっと、特別な人間になりたくて頑張ってきたし、今もあがく時があるけれど、最後はここにたどり着くんじゃないかと思う。だからエヴァは、子供しか乗れなかったのではないかとすら思う。大人になることは、エヴァのパイロットになることじゃない。加持のように、ミサトさんのように、第3村の住民たちのように、パイロットを支える側に回ることそのものが、大人になることなんじゃないか。

 『beautiful world』もエヴァンゲリオンの曲だけど、逆にこの曲は、私に子供時代を思い出させる。初めて『beautiful world』を聴いたのは小学生の時で、『寝ても覚めても少年マンガ 夢見てばっか』の歌詞に、深く共感するような子供だった。漫画は今でも好きだし、少年マンガの主人公に勇気づけられることもあるけれど、それを夢見て、がむしゃらに頑張ったりはしない。というか、もうできない。それを成長と呼ぶのか、退化と呼ぶのかはわからないけれど、私は今の自分を受け入れたいと思うし、『One last kiss』のメロディーに寄り添える自分を肯定したいと思う。

 『One last kiss』の歌詞には、ひとことも『大人になる』なんてキーワードはないんだけど、わたしにとっては、それをふと感じさせられる曲だった。

 今が永遠じゃないということと、これまで積み上げてきた人生の中で、『わたしだけのモナリザ』に出会えたことのありがとうの気持ち、それらを思い出したい時、またこの曲を聴きたい。

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