【アルデバラン(AI)】一人の女性としての母

 NHK連続ドラマ『カムカムエヴリバディ』の主題歌。

私にとっては、戦争のように、一寸先が見えない状況でも、心の中の《日の当たる場所》で笑い合おうよ、というメッセージを感じると同時に、一人の女性としての、自分のお母さんを思い起こさせる曲。

『アルデバラン』AI(作詞作曲:森山直太朗)

アルデバランという星

歌の題名になっている『アルデバラン』という星は、おうし座で最も明るい1等星だ。
地平線から昇ってくるとき、同じおうし座の星団『すばる』の後に続いて出てくることから、

日本語では、『すばるの後星(あとぼし)』
アラビア語で、『後に続くもの(Al Dabaran)』

と呼ばれる。

また、アルデバラン自体は太陽のように自ら輝く星だが、星としての死期は近い。

『カムカムエブリバディ』は、ラジオ英会話とともに歩んだ、親子3代の100年物語で、そんな朝ドラの主題歌としてこの星の名前が採用されたのは、

  • 夜空の1等星を見上げて、皆で同じ物語を思い起こすということ
  • 世代は、後に引き継がれていくということ
  • 死が近くても、近いからこそ、光を放つということ

それらの象徴なんじゃないかな、と調べながら思ったりした。

笑って 笑って 愛しい人

 この印象的な歌詞を聴いたとき、『愛しい人』として思い出したのは、友達でも、恋人でもなく、自分のお母さんだった。

『カムカムエブリバディ』の女性ヒロインのイメージも強かったんだと思うけど、母がもし死んでしまったら、この歌詞を思い出す気がする。

 小さい子供のころ、私にとって母とは、絶対的な、自分を受け入れ、守ってくれる女神さまのような、そんな存在だった。

 今、私自身が大人になって、母が私を産んだ年齢に近づいた時、母をそのような存在ではなく、一人の、時に苦しみ、喜び、今ももがき続けている女性として、母を見ている気がする。

お母さんも、若いとき、苦しかった時はあった?
自分の見た目のコンプレックスに苦しんだことは、きっとあったよね。
わたしとお母さんは、そういうところは、似ているから。
どんな気持ちで、働いてたのかな。家で勉強していた姿を、今でも覚えてる。
真面目で手を抜けない性格は、お母さん譲りだと思う。
お父さんと喧嘩して、泣いていたよね。
きっと、悲しくて、寂しくて、少し虚しかったんじゃないだろうか。

今なら、少しだけ、気持ちがわかる気がするんだ。

笑って 笑って 愛しい人

不穏な未来に 手を叩いて

君と君の大切な人が幸せである そのために

祈りながら Sing a Song

『アルデバラン』(AI)歌詞抜粋

全部の歌詞が好きだけど、ここの歌詞が一番泣ける。

今は『カムカムエブリバディ』の安子が生きた時代のように、日本が戦争中ということはないけれど、それでも、明日の見えない不安や、わかってもらえない虚しさや、普通に生きているだけで降りかかってくる、世間からの圧力や、自分自身のコンプレックス。

沢山のものと、わたしたち親子はずっと、闘ってきたよね。

だから、今度は、お母さんが泣いた時、苦しくなった時。

そんな時、お母さんを笑わせてあげる、寄り添ってあげられる娘でいたいと思うんだ。


そんな気持ちで、この曲を聴いている。

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